模造パール

模造パールの歴史は意外と古く、古代ローマ人が作ったのが創始とも、そしてその後イタリアのヴェネチア、イングランドのエリザベス1世女王に至っては、天然真珠で足りない分を補うため、人工真珠産業を確立したとも言われますが、現代に近い模造真珠は、1656年フランス人(Jaquin)により、造られたときに始まると言われます。
ガラスを丸く珠にしたものを原珠とし、外層もしくは中空にして内側からパールエッセンスと呼ばれる液を吹き付けたり塗布して乾かすのですが、そのエッセンスの原料は魚の銀白色に良く見られるGuaninと呼ぶもので、主に鱗や皮、浮き袋に沈着されるもの。太刀魚、ニシン、鰯、キス、コイ科の魚に良質のグアニンが採れる為、よく利用された様です。アルコールで洗浄して脂肪分を取り除き、アセトン、セルロイド、ニトロセルロース、卵白、酢酸アミルの混合物を加え造ります。
それを原珠と呼ばれる元玉に吹き付け乾かした後、更にリアルパールの様な質感を出すため、虹彩の様な光沢感を付ける目的で、鉛、ニッケル、マンガン、銀、ビスマスから造られる被膜をかけています。もちろん現在はそれらの材料は使わず、全て化学薬品が使われています。

そうした模造パールは一定の人気があり、デザインバリエーションを替えながら、長きにわたって造られ続きますが、20世紀に入ると新しい素材として樹脂、コットンパール等が登場。プラスチック、綿を原珠として、また色もアイヴォリー、グレー、ベージュ系白色から、本来のパールには在り得ない様々なカラーのパールが登場し、それらはファンシーカラーパールとして、大粒の物が何連ものネックレスに仕立てられ、人気を博しました。

 

                   参考資料;2005年国立科学博物館「パール展」目録、IBPC大阪日本のマーケット情報、