気力も体力も資金力も限界になったところで、
今回の買い付けは終了。
未だ春浅い、欧州を発つ最後に、今回の印象
深い思い出と出逢いの品を。
いつもは高額で手が出せないクラスの宝石を
商う、フランスのジュエリーディーラー。
それでも訪れた時には、必ず商品を見せて
貰うのですが、多くは歯が立たず。
向こうも「『この人、買わないのよねー』と
思いながら接客しているんだろうなぁ」
なんて考えつつ、ショーケースの中に美しく
並んだ宝石群の、一つの小さなペンダントに
目が吸い寄せられました。
小さなダイヤモンドが中央でフルフルと揺れる
天然パールがあしらわれたペンダント。
20世紀初頭のプラチナ&18金製のリース型の
フランス製ホールマークの在るペンダント。
ダメ元と、おそるおそる価格を聞けば、何と
珍しく手が出る範囲!
「絶対買います!今銀行に行ってきます!」
と有り金を内金に置いて、脱兎のごとく銀行へ。
とても幸せ気分で帰宅しました。
良質な宝石の在り方の条件の一つに、石の質と
造りの質のバランスが合っている事があります。
このペンダントも、おそらくそこそこのクラス
の方の為に造られた品でしょう。
細やかに打たれたミル打ちの正確さ、石を護る
為の二重の枠構造、そして相当の熟練職人に
よって仕立てられ、磨き上げられた全体仕上げ
の完璧さ。
量産品と違い、手抜きが見当たりません。
ダイヤモンドは小さいけれど、クオリティの
高い、良く煌めく美しい石が使用され、
何より見た目より地金が多く使われていて、
手に持った時、ズシリと重みを感じることが
全体の質の良さを証明しています。
現代の、見た目よりずっと軽く地金を落として
造るという品とは、対極にある考え方。
確かに今のお手軽ジュエリーとは違う、
それなりなお値段にはなりますが、可能な限り
お若い方に挑戦して頂きたい。
こういう品を選び持つことが、更なる次の良い
ジュエリーへとステップアップする、試金石に
なると思います。
『お宝』と呼べる、永遠性を感じる美しい
ジュエリーを腕に抱え、使命を果たした気持ちで
日本へ帰る事の出来る自分に「お疲れ様」を
唱えつつ、幸福に満たされた日本へのフライト
タイムを過ごせました。