ディテールの神サマ

アンティークジュエリーの一つに見る技法ミルグレイン。

フランス語のミル(無数)とグレイン(ビーズ珠)を
合わせた言葉で、金属のエッジ部分に、先端に球形の
凹みのある楊枝の様に細い『タガネ』という道具を
使い、ひたすら淵を打ち込んで行く作業です。

機械で出来そうで、実はオールハンド。

その打ち方が均等で細かい程、華やかさが際立ちます。

小さな演出ですが、打たれる前と後で、やはり見え方に
格段に差が出る『ディテールに神宿る』の典型です。

このミルグレインが何より得意で、一歩秀でた造りを
魅せたのは、どうやらフランスのカルティエ。

そしてこの技法が大流行した、20世紀初頭のイギリスでは
エドワード7世の治世時代。

それまでの重々しいヴィクトリアンジュエリーから一転、
お洒落で伊達男、美しいなモノがだ~い好きな王様は、
宮殿で行われるレセプションで、ティアラを装ってこない
お客(王侯貴族)にすら、不快感を示したとか。

自身の戴冠式にフランスカルティエに大粒ダイヤを使った
王冠を注文したことから、祝賀会に参列する貴族達が
こぞって欧州の宝飾店におしかけて、店は注文を捌く事に
難儀したそう。

ある意味、欧州最後の豪華な王族貴族文化の名残です。

そんな『超』が付くハイジュエリーは、簡単に購入したり
身に着けたりすることも難しいですが、銀やペーストを
使った、カジュアルバージョンの品にもみかけ、これなら
気楽に楽しむ事も可能なり。

ディテールの神様は、プチプラにも宿りまする。