伯爵夫人の百合

いつの世も、セレブが纏う衣装や装身具が注目されて
流行の起源となるよう。

100年前、ベル・エポックのパリを社交界の名花として
生きたマリー・アナトール・ルイーズ・エリザベス・
グレフュール伯爵夫人。

18歳という齢で結婚、そしてよくある、結婚生活は
パートナーの不義理で不幸だけれど、その分お金は
湯水のごとく使える幸福という、アンビバレントな
世界に生きたフランス女性の一人。

数年前にパリで、彼女が日常やサロンで身に着けた
衣装の展覧会を見る機会を持ち、当時の社交界
という世界で、ある意味虚飾を持って生きなければ
ならなかった女性が、どうやって己の立場を誇示し
生きたかを知るには良い機会でした。

ドレスは『百合』と名付けられた、19世紀を代表する
デザイナーウォルトによるイブニングドレス。

最後の貴族文化が華やかに彩ったこの時代フランスを
象徴する花フルール・ド・リスと呼ばれる百合の花の
モチーフが流行した様で、このドレスにも花束の様に
使われています。

傍らに置いたブローチも、同時代のフランス製。

一寸珍しいルビーが敷き詰められた百合のブローチ。

でも、面白いことにドレスが華やかになればなるほど、
ジュエリーは控え目が当たりまえだった様で、あまたの
残された当時の写真や描かれた絵画の中では、
意外にも装身具は耳元の小さな一粒の真珠等が
主というのも面白いです。