真珠の想い出

~お知らせ~17日、18日は定休となります。

ようやくウィルスも検出されず、仕事再開。

さてお待たせしていたお客様のご来店を…
と思っていたら、お一人の方から、
ご高齢であったお母様が、鬼籍に入られた
という報を受け取りました。

最後数年、寝たきりであったというお母様と
若いころから意見が合わず、反目することも
多かったという、母娘の心理的相関図。

ある日、いつもの様に介護の為に、食事を
造り届けたところ、お嬢さま(お客様)が
着けていた当店でお求めの真珠のリングに
目を留めて「なんて綺麗な真珠!」と褒め
称えてくれたとか。

エドワーディアンからアールデコの辺りに
造られた、真珠とダイヤモンドの繊細な
リングで、コロナ渦中、次々ロックダウン
して行く混沌の欧州から発送してもらった
ものの、何故かドイツの空港貨物センター
で荷物が止まり、一向に動く気配を見せず
ひと月近くかかって届き、ようやくお客様に
お渡しが出来た事を今でも覚えています。

「何だか母のその一言で、怖くて嫌いで…
数十年もわだかまっていた気持ちがサラリと
溶けて、今やっと優しく出来ます」という
メッセージを頂き、小さな宝石が離れていた
二人の心を再び繋ぎ、硬い壁を押し流す事も
あるのだと、嬉しかった記憶が蘇りました。

そうやって、美の結晶のジュエルは、美しい
思い出を何十にも纏い、また次の世代へと
渡って行くのかもしれません。

S様、お母様のご冥福を、心からお祈り申し
上げます。