母なる貝の装身具

定番パールは好きですが、もっとカジュアルに
気取らずに使えるアクセサリーの素材、それで
いて古い物でないと出逢えない素材の一つに、
マザー・オブ・パールのビーズがあります。

文字通り『真珠の母』という、希少な真珠を
育てる大元の、真珠層を持つ貝に限定され、
この類は取れる為、母貝の部分を削り込んで
ビーズに仕立て、磨き上げ、糸で繋いだ、
あらゆるサイズのネックレスは、古代から
現代に至るまで、時代と国境を超えて
使われた装飾品の素材の一つですが、貝の
乱獲で種類は激減。

面で育つ貝がビーズをくり出せる程に厚みを
付けて行くのは、相当な年月が必要。

故にビーズの大きさも限界があり、最近では
ボタン用に養殖はされていても、直径10mmを
超えるような、大粒のタイプは殆ど見られず。

真珠ほどフォーマルな印象はなく、それでいて
パール層だけが持つ、独特の光沢感が魅力。

そして何より、使い込む程に人の汗と皮脂油を
吸い込み、より色と輝きが深みが増すという、
貝が持つ独特の多孔質故の効果が、美しさに
魅力を加えます。

つまり、他の装身具と違って、お手入れの類は
一切無用。

雑に扱えば扱うほど、味わいが付いて来るという
一石三鳥に楽チンなもの。

ビーズの形状は真ん丸の球形からナツメ型、
ドロップ、マカロン…と様々ですが、技術的に
一番困難なタイプはナツメ型。

ハンドカーヴでのみ仕立てられる形状故に、
ネックレスでも一粒一粒が似ていて異なる形に
なり、不揃い故の楽しさが。

貝ビーズの装身具は、母貝が潤沢に採取出来た
1930年位が最後の全盛期でしょうが、ビーズの
並べ方にもグラデーションを付けたり、ワイヤー
編みしたりと、細かな配慮が見られます。

そんな美しい貝ビーズの1920~30年代の
ネックレス20点近くが先日海を超えて、
イギリスから到着。

実際買い付けに行っても、これほどまでの数は
揃わないもの。

長いお付き合いのディーラーさんとリモート
四方山会話していて「貝?あるある!」と引出し
一杯のストックを見せられて、思わず「それ、
ぜ~~んぶ送って~!!!」…とオトナ買い。

既に先輩方が付けてくれた味わいカラーに、次は
貴方が手伝って頂ければ、幸いです。